以前はトレーニング後に『どのタイミングで』『どういった内容の』食事を取るのが理想的なのか、といった議論が多かった印象ですが、最近の研究では、トレーニング前の食事が非常に重要である事が分かってきました。
この記事では
- なぜ筋トレ前の食事が重要なのか
- どういう食事が理想的なのか
- 具体的に筋トレの何時間前に食事を取れば良いのか
この辺りに関してエビデンスも交えて解説していきます。
是非参考にしてください。
筋トレ前の食事が重要な理由
これまで、トレーニングと食事の関係性に関して様々な研究が行われてきました。
その中からいくつか興味深い研究報告を取り上げながら解説していきます。
筋肉の合成は筋トレ開始直後から始まっている
トレーニング後のタンパク質合成等を調査した研究
を見てみると、タンパク質の合成はトレーニングの開始直後から始まっていると報告がされています。
つまり、筋トレの効果を出来る限り高め、効率的に筋肉を成長させるためには、トレーニングを開始する段階で十分な栄養素が体内に備わっている事が重要と考えられるようになりました。
もちろんトレーニング後の食事が大切な事に変わりはありませんが、こういった研究報告が行われるようになった事で、より効率的に筋肉を成長させるためには『トレーニング前』の食事が重要だと意識されるようになりました。
栄養が不足していると筋肉が分解される
栄養が不足している状態でトレーニングを行った場合、筋分解が起こり、筋肉の成長という面において非効率な状態に陥ると考えられています。
運動後の筋グリコーゲン合成を調査した研究
Muscle glycogen synthesis after exercise: effect of time of carbohydrate ingestion
を見てみると、運動直後に栄養補給を行わなかったグループにも筋グリコーゲンの回復が見られた事が報告されました。
現在のところ、エネルギーが不足していると骨格筋タンパク質の分解が起こり、その分解よってこのような現象が起こると考えられています。
ちなみに筋グリコーゲンとは、筋肉に蓄えられている糖の一種で、筋収縮のエネルギー源とされています。
つまり栄養不足の状態でトレーニングを行うという事は、筋肉を成長させるためにトレーニングを行っているハズが、そのトレーニングを行うために筋肉を分解してエネルギー源を確保している、という矛盾した状態に陥ってしまうと考える事が出来ます。
効率良く筋肉を成長させたい増量期においても、出来るだけ筋肉を維持したい減量期においても、このような現象は出来るだけ避ける事が望ましいと言えます。
このような面からも、いかにトレーニング前の栄養補給が大切かがお分かり頂けるでしょう。
筋トレ前の食事メニューに必要な栄養素
では実際にどのような食事が望ましいのか、次はこの辺りを解説していきます。
こちらもエビデンスを交えながら解説していきますので、是非参考にしてください。
筋トレ前に必要な栄養素とは
一般的に筋肉を成長させるためにはタンパク質が重要で、そのためトレーニング前中後に出来るだけタンパク質を摂取した方が良いと考えがちですが、意外な結果が研究で示されています。
プロテインを飲むタイミングで筋肉の成長に変化があるのかを調査したこちらの研究
では、どのタイミングでプロテインを飲んでも有意な差は見られなかったと報告しています。
この結果だけを見ると、トレーニング前の栄養補給の重要性に疑問を感じそうですが、他のエビデンスと併せて見ると違った結論が見えてきます。
タンパク質と炭水化物の配合バランスを変えて摂取し、筋グリコーゲンへの影響を調査したこちらの研究
Carbohydrate-protein complex increases the rate of muscle glycogen storage after exercise
を見てみると、炭水化物とタンパク質の同時摂取が最も筋グリコーゲンの貯蔵が見られた、と報告しています。
具体的には
- 炭水化物80g+タンパク質28g+脂質6g
- 炭水化物108g+脂質6g
- 炭水化物80g+脂質6g
の3グループに分けたところ、1のグループが最も筋グリコーゲンを貯蔵し、その差は顕著だったと報告しています。
タンパク質の有無が差を生んだのでは?という疑問も感じられますが、続いてアミノ酸と炭水化物の摂取タイミングによる筋肉の成長を調査したこちらの研究
を見てみると、EAAと炭水化物をトレーニング前に飲んだグループが最も多くのアミノ酸が全身に運ばれた、と報告をしています。
これらの事を総合的に考えると、プロテイン等のサプリを使用してタンパク質のみ摂取しても効果は不十分で、そこに適切な炭水化物を加える事によって理想的な栄養補給となる、と考える事が出来ます。
炭水化物とタンパク質の同時摂取がパフォーマンスを向上させるという報告は他のエビデンスでも見られるため、やはり筋トレ前に必要な栄養素とは『炭水化物とタンパク質の混合』と考える事が論理的であり、現時点において高い信頼性のある結論だと言えるでしょう。
理想的な摂取量とは
次に、それぞれの栄養素をどの程度の量、どのようなバランスで摂取するのが理想的なのかを考えていきます。
しかし、これに関しては結論を導き出すのがとても難しいと言えます。
生活習慣やトレーニングの時間帯、トレーニング前のどのタイミングで食事が取れるのか、固形物で取るのか、サプリで取るのか、等々状況は人それぞれで一律の答えを出すのが難しく、そのため『自分に合った最適解を求める』という結論が最も現実的と言えるかもしれません。
その『最適解』を求める上で参考となりそうなエビデンスをいくつか紹介しながら解説をしていきます。
タンパク質は20~30gが一つの目安に
運動後に摂取するタンパク質量によって筋肉やタンパク質の合成に差は表れるのか、を調査した研究
を見てみると、プロテインを20g飲んだグループと40g飲んだグループでは差があまり見られなかった、と報告をしています。
世間一般でも、一度に大量に摂取するよりも計画的に分割して摂取した方が効率良く吸収される、と考えられていますが、この結果はそれを裏付けていると考える事が出来そうです。
もちろん消化吸収能力は個人差が大きく、一律な適正量と断言は出来ませんが、まずはタンパク質の摂取量は最低20g、多くても30g程度と設定するのが望ましいと言えそうです。
炭水化物の摂取量は運動強度に左右される
炭水化物摂取のガイドライン
Guidelines for daily carbohydrate intake: do athletes achieve them?
を見てみると下記のように示されています。
| 長時間競技の前の炭水化物摂取量 | 体重1kgあたり1~4時間前に1~4g |
| 1時間以内の中強度競技・間欠的運動 | 1時間につき体重1kgあたり0.5g~1g |
一般的なトレーニーが参考に出来るのは下の方と考えるのが自然なので、こちらの数値から求めてみます。
・体重80kgのトレーニーが1時間トレーニングする場合
| 炭水化物摂取量 | |
|---|---|
| 上限 | 80g |
| 下限 | 40g |
・体重80kgのトレーニーが2時間トレーニングする場合
| 炭水化物摂取量 | |
|---|---|
| 上限 | 160g |
| 下限 | 80g |
と求める事が出来ます。
この数値から、例えばトレーニング中にマルトデキストリンで30g糖質を摂取している、という場合であればその30gを差し引いて、残った量を食事で摂取するのが望ましいと言えるでしょう。
エビデンスの内容の解釈や捉え方によって多少の誤差は生じるかもしれませんが、概ね適切な考え方だと思いますので、参考として頂けたら幸いです。
ちなみに、国際スポーツ栄養学会が公開している栄養摂取のタイミングのレビュー
International Society of Sports Nutrition position stand: Nutrient timing
でも、競技の4時間前に体重×1~2gの炭水化物の摂取を推奨していますので、この事からも先ほど求めた摂取量は適正の範囲内だと言えるでしょう。
こうして求められた摂取量を、一日の総摂取量や一日の食事の回数等も考慮に入れ、ご自身の状況に合わせて微調整して設定する事が望ましいと考えられるでしょう。
筋トレ前の食事の理想的なタイミング
理想的な栄養素・量がある程度求める事が出来たら、次に気になるのが理想的なタイミングでしょう。
これに関しては、固形物で摂取するのか、それともサプリで摂取するのかを考慮に入れる必要がありそうです。
詳しく見ていきましょう。
固形物で摂取する場合
炭水化物を摂取した場合、消化するのに平均で2~3時間程度必要と考えられています。
タンパク質を摂取した場合は、消化するのに平均で3~4時間程度必要と考えられています。
消化には消化器官に血液が十分にまわる事が必要なのですが、その最中にトレーニングを行い、筋肉に血液がまわってしまうと消化が不十分となり、消化不良を起こす恐れがあります。
従って、固形物で栄養を取る場合は最低でも2時間程度はトレーニングまで時間を空ける事が望ましいと考えられます。
これまで紹介してきたエビデンス等を見ても、トレーニング前の食事に関しては概ね1~4時間前での摂取方法、摂取量に関して報告・指摘している印象を受けます。
固形物を食べて消化吸収される時間を考慮しても、理想的とされる推奨量を摂取する場合はトレーニングの2~3時間前が一つの目安と言えそうです。
更に踏み込んで解説するのであれば、消化吸収能力は個人差が大きいため、まずは2時間前に食事を取るようにしてみて、そこからトレーニング中の疲労具合等の感触を確かめ、その上で微調整するのが望ましいと言えるでしょう。
サプリで摂取する場合
忙しくてなかなか食事の時間を取れず、サプリで摂取する方も少なくないと思います。
その場合、固形物と消化の時間が変わってきますので、そこを考慮に入れる必要があります。
例えばプロテインでは、摂取したタンパク質の種類によってタンパク質の合成や分解にどのような影響を与えるのか、を調査したこちらの研究
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
を見てみると、通常のホエイプロテインの場合60分~120分で吸収されたと指摘しています。
このように、基本的に固形物よりも消化吸収が早い場合が多く、そのため理想的な摂取時間は固形物で摂取する場合と変わってきます。
従ってプロテイン等のサプリで摂取する場合は、トレーニングの1時間前というのが一つの目安と考えられます。
この場合、既に解説した通り炭水化物も併せて摂取する事が望ましいため、カーボパウダー系のサプリを一緒に摂取する、もしくはおにぎり1個といった吸収が比較的早い炭水化物を少量併せて摂取して、足りない分はトレーニング中のドリンクにマルトデキストリン等のカーボパウダーを混ぜて摂取する、というのが望ましい一つの例と考えられます。
ちなみに、炭水化物はGI値が高いほど素早くエネルギー源になりやすいという報告もありますので、出来るだけ早くエネルギーを補給したい場合はそういった部分も考慮に入れると良いかもしれません。
| GI値 | |
|---|---|
| 食パン | 95 |
| 精白米 | 88 |
| もち | 85 |
| うどん | 85 |
| そうめん | 80 |
| ベーグル | 75 |
| パスタ | 65 |
| そば | 54 |
具体的な筋トレ前の食事メニュー例
それではこれまでの事を総合的に考慮して、具体的な食事メニューを検討してみましょう。
この具体例は男性トレーニーで体重が80kg前後、トレーニングの時間が90~120分程度、という前提で提示しています。
ご自身の体質や体重、トレーニング時間等によって調整が必要である点には予めご理解ください。
トレーニング2~3時間前に食事が出来る場合
<パターン1>
- 白米(150g)
- 納豆
- 卵
- 味噌汁
| カロリー | 491kcal |
| タンパク質 | 21.26g |
| 脂質 | 12.02g |
| 炭水化物 | 70.61g |
いわゆる『日本人の朝食』といった内容です。
改めて見ると、和食というのは本当に理想的なバランスをしている事が分かります。
ちなみに脂質に関してですが、個人的には10g前後になるよう推奨しています。
理由は、取り過ぎると摂取カロリーが増え過ぎてしまう事や、摂取量を増やしてもエネルギー効率にポジティブな影響を与えないという報告があるからです。
ただ、バランス良く食事をするために10g前後は取る事をおすすめしています。
<パターン2>
- 白米(150g)
- 鮭の塩焼き
- 目玉焼き
- 味噌汁
| カロリー | 523kcal |
| タンパク質 | 30.81g |
| 脂質 | 14.62g |
| 炭水化物 | 61.27g |
同様に和食でバランス良く、といった内容になります。
<パターン3>
- ご飯(200g)
- スクランブルエッグ(卵1個分)
- 鶏胸肉皮無し(50g)
| カロリー | 533kcal |
| タンパク質 | 23.93g |
| 脂質 | 12.76g |
| 炭水化物 | 75.19g |
いわゆる『トレーニー飯』といった感じの食材で、シンプルに塩コショウで味付けするメニューです。
このようにトレーニングの2~3時間前に食事が取れる場合は、理想的とされる摂取量を出来るだけしっかり取る事を意識します。
カロリー計算サイトslismを使用すれば、様々な食材の組み合わせを検討して食事メニューを考えられるので、良かったらご利用ください。私も、食事メニューに変更を加えたい場合等によく利用しています。
もちろん無料ですし、ダウンロード等は一切不要です。
slism⇒https://calorie.slism.jp/
トレーニング1時間前に食事をする場合
既に解説した通り、固形物をしっかり食べた直後にトレーニングを行うと消化不良を起こすリスクがあるため、食事を取るのがトレーニングの1時間前になる場合は
- 消化が早い物を取る
- 量を取り過ぎない
この2点を意識する必要があります。
それを踏まえると、タンパク質の摂取は基本的にホエイプロテインで摂取するのが望ましいでしょう。
一般的なホエイプロテインであれば、一杯でタンパク質が約20g程度摂取出来ますので、少な過ぎるという心配はありません。
問題は、炭水化物を『何で』『どの程度』摂取するかでしょう。
これはエビデンスではなく個人的な体感やトレーニー達の声によるものですが、多くの方が固形物で摂取した方が質の高いトレーニングを行う事が出来るという意見を持っています。
これらの声を参考にすると
- 消化が早い固形物(高GI値)
- 少量
という点を意識して選択するのが望ましいと考えられます。
具体的には『おにぎり1個』『素うどん』辺りが理想的と言えそうです。
ちなみに通常のおにぎりは40g前後、素うどんは50~60g程度の炭水化物を取る事が出来ます。
『理想的な量』から見ても少な過ぎるという量ではないので、エネルギー不足に陥るリスクは少ないと考えられます。
食事を取るのがトレーニングの1時間前になるという方は、これらの意見を参考にメニューを決めて頂けたらと思います。
筋トレ前の食事がコンビニ飯の場合
実際のところ、自炊で食事を用意出来るという方ばかりではなく、外食やコンビニで食事を済ませるという方も少なくありません。
そういった場合の食事メニューを考えていきたいと思います。
とはいえ、コンビニや外食の商品は常に進化しており、未来永劫発売され続ける商品という物はまずないでしょう。
従って、これまで解説してきたエビデンス等を参考とした『選ぶ際に意識する点』を解説していきたいと思います。
トレーニング2~3時間前に食事が出来る場合
トレーニングの2~3時間前に食事が取れる場合は
- 理想的とされる摂取量をしっかり取る
- 固形物で取る
この2点を意識しましょう。
理想的とされる摂取量に関しては既に解説済みですが、改めてまとめると
| タンパク質 | 20~30g |
| 炭水化物 | 体重×0.5~1g×トレーニング時間 |
| 脂質 | 10g前後 |
という水準が一つの目安となるでしょう。
サラダチキンやおにぎり等を組み合わせれば比較的容易にこのような栄養バランスに設定する事が出来ますし、最近ではトレーニーに嬉しいPFCバランスの加工食品が増えていますので、楽しみながら食事メニューを考えて頂けたらと思います。
後は実際にトレーニング中の体の反応等を見ながら微調整する事を意識しましょう。
トレーニング1時間前に食事をする場合
トレーニングの1時間前に食事をする場合は
- タンパク質はプロテインで取る
- 炭水化物は高GI値食品で少なめに取る
この2点を意識しましょう。
最近はコンビニでもプロテインが買えるようになりましたし、おにぎりやパン、麺類等の炭水化物が豊富に揃えられており、工夫次第で色んな組み合わせを楽しむ事が出来ます。
たいてい栄養素が表示されていて計算も簡単に出来ますので、是非楽しんで食事メニューを考えてもらえたらと思います。
おすすめのファストフード
最後に、トレーニーの強い見方とも言えるファストフードをご紹介します。
- すき家
- サブウェイ
この2つはPFC(タンパク質・脂質・炭水化物)の量までしっかり表記されており、理想的なPFCバランスの商品が複数あります。
全国にお店があり、当然ですがどこのお店で食べても味も栄養素も安定しています。
複数のジムを利用するトレーニーや、気分転換に食事メニューを変えたいトレーニーにとてもおすすめです。
興味のある方はチェックしてみてください。
サブウェイ⇒https://www.subway.co.jp/sp/menu/
まとめ
- 筋肉の合成はトレーニング直後から始まっている
- 栄養不足でトレーニングを行うと筋肉が分解するリスクがある
- 筋トレ前に必要な栄養素はタンパク質と炭水化物の両方
- 食事のタイミングによってメニューを変える
トレーニングと食事に関する研究は日々進んでおり、それに合わせるようにトレーニーの知識レベルも向上し、より効果的な食事の取り方を追求するトレーニーが増えてきた印象を受けています。
そういった方々に、この記事が少しでもお役に立てたら光栄です。
筋トレ後の食事に関しても詳しく解説している記事がありますので、良ければ併せてご覧ください。
重複する部分もありますが、併せてお読み頂く事で食事管理に関する知識が深まりますのでおすすめです。
当サイトは、この他にも筋トレやダイエットに関して様々な解説記事を掲載しています。
お役に立てれば幸いです。


コメント