昨今のボディメイクブームもあり、トレーニーの食事に対する知識レベルは非常に高まってきていると感じます。
増量中でも、リーンバルクやクリーンバルクが意識され、高いレベルで管理された食事を摂っている方が増えてきました。
しかし、それらを意識するあまり、脂質を必要以上に敬遠してしまい、減量中でないにも関わらず過剰に脂質をカットしてしまう方も少なくない印象を受けます。
- 脂質不足は筋トレにどのような影響を及ぼすのか
- 摂取する脂質の選び方は
今回はこの辺りを解説していきます。
脂質を適切に摂取する事の重要性を理解してもらえたら嬉しいです。
脂質が足りないと筋トレにどんな影響が?
低脂肪食と高脂肪食を比較した研究
Low-fat diets and testosterone in men: Systematic review and meta-analysis of intervention studies
では、更なる研究が必要との注意書きはありますが、低脂肪食のグループはテストステロン値を低下させると結論付けています。
テストステロン値が低下している場合、低下していない場合と比べると、筋力が伸び悩む、いわゆる『停滞期』に陥る可能性が高くなります。
他にも気力の低下等、トレーニーにとっては好ましくない状態に陥りやすくなります。
エビデンスも加え、詳しく見ていきましょう。
テストステロンとは
テストステロンとは、男性における主要な性ホルモンであり、筋肉や骨を作る蛋白同化作用を有する『蛋白同化ステロイド』でもあります。
ホルモンの研究
Genes involved in androgen biosynthesis and the male phenotype
でも指摘されている通り、このテストステロンが原料としているのがコレステロールなのです。
つまり、脂質を控え過ぎた結果体内に十分なコレステロールが存在していない場合、テストステロン値が低下し、トレーニーにとっては好ましくない状態になる可能性が高まると考えられています。
では、テストステロン値が低下すると具体的にどのような影響があるのかを見ていきましょう。
筋肉の成長への影響
ステロイドホルモンの一つ、アンドロゲンと骨格筋タンパク質合成の制御に関する研究
Androgens and the control of skeletal muscle protein synthesis
でも指摘されている通り、テストステロンはタンパク質合成を促進すると考えられています。
また、LOH症候群のように著しくテストステロン値が低い場合は、筋トレをしても筋肉の増強が期待出来ない、といった指摘もされています。
このようにテストステロンには、筋肉や筋力を強化させる『同化作用』があると考えられており、体内のテストステロン値が低下している状態では、思うようなトレーニング効果を得る事が出来ないと指摘されています。
メンタルへの影響
世間一般的にも、例えば意欲・攻撃性といった『医学的に見た男性』としての特徴が強く表れている方に対して、『テストステロン値が高い』というような言葉を向けられる事があります。
実際に行われた、様々なジャンルの映画を見た際の、男性のテストステロン値を計測した研究
Changes in saliva testosterone after psychological stimulation in men
でも、性的な映画を見た男性グループのテストステロン値の上昇を報告しており、併せてテストステロン値が上昇したグループでは、意欲や競争心の高まり、疲労感の軽減が見られたと報告しています。
このようにテストステロンは精神面での影響も報告されており、トレーニーにおいてはそれがプラスに働く可能性が高いと考えられています。
では、どんな脂質を摂取すれば良いのか、どの程度脂質を摂取すれば良いのか、次はその辺りを解説していきます。
脂質の種類
脂質には様々な種類があります。
一般的には『良い脂質』と『悪い脂質』に分けられる傾向がありますが、脂質に限らず適正値であればポジティブな影響を与え、多過ぎる、又は少な過ぎる場合はネガティブな影響を与えます。
まずはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
飽和脂肪酸
一般的に身体に悪いと言われる事が多いのが飽和脂肪酸です。
理由を簡単にご説明すると、世界保健機構(WHO)によるレビューで『多量の飽和脂肪酸の摂取は心血管疾患のリスクを高める』と指摘された事や、『飽和脂肪酸の多い食事は糖尿病リスクが上がる可能性がある』と指摘された事等が挙げられます。
他にも、アメリカ心臓協会(AHA – American Heart Association)が、飽和脂肪酸のリスクを指摘している事等が根拠として挙げられています。
しかし、飽和脂肪酸を完全にゼロにする事は非現実的な考えであり、そもそも飽和脂肪酸が完全な悪者かと言えば、そうでない部分も当然あります。
例えば、人気のMCTオイルは飽和脂肪酸に含まれる中鎖脂肪酸です。
中鎖脂肪酸は効率的に脂肪をエネルギーに変換できるため、減量中でも好んで使用する方がいるような脂肪酸です。
また、一般的にコレステロール値を上昇させるのが飽和脂肪酸と考えられています。
そのため、重量が伸び悩むトレーニーが意識的に摂取を増やす場合もあります。
このように、飽和脂肪酸の中にはエネルギー変換効率を高めたり、筋肉の成長促進が期待出来たり、トレーニーにとっては好ましい効果も存在する、という事は知っておくべきでしょう。
<飽和脂肪酸が多い食材例>
- 肉
- 牛乳
- バター
- 卵黄
- チョコレート
- ココナッツ
- パーム油
不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とは逆に、一般的に身体に良いと考えられているのが不飽和脂肪酸です。
その理由は、コレステロール値を調整する効果が期待出来る、心血管疾患リスクを低下させる効果が期待出来る、といった事等が挙げられます。
特に近年注目されているのがEPAやDHAです。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAはオメガ3脂肪酸の多価不飽和脂肪酸の一つです。
2008年、基礎研究により脂質代謝や血液凝固異常の改善が認められたと発表され、注目が集まりました。
また、中性脂肪の低下等、様々な健康面においてのポジティブな効果が報告され、現在では閉塞性動脈硬化症や高脂血症の治療薬としても利用されています。
他にも、血中中性脂肪値が高めの成人男女を対象とした研究
血中中性脂肪値が高めの成人男女を対象としたエイコサペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸含有飲料の12週間連続摂取による血中中性脂肪値低減効果および安全性の検討
により、脂肪の減少効果が高いとも報告されています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、EPA同様オメガ3系多価不飽和脂肪酸の一つです。
DHAは、脳の脂肪酸の主要成分であるため、『頭を良くしたいならDHAを摂れ』なんて言う方もいらっしゃいます。
実際に行われたDHAの生理活性の研究
では、下記のような効果を報告しています。
- 学習機能向上作用
- ガンの抑制作用
- 血中脂質低下作用
- 網膜反射脳向上作用
- 血圧降下作用
- 抗血栓作用
- 抗アレルギー作用
- 抗炎症作用
- 糖尿病リスク低下作用
ただし、これらの報告には研究データが乏しいという指摘もあるため、あくまで参考程度として見た方が良いかもしれません。
このようなポジティブな報告が多い事が、DHAやEPAが注目されている理由として挙げられます。
ちなみに、DHAもEPAも魚に多く含まれている事から、多くの場面でフィッシュオイルサプリと同義語として扱われています。
脂質の種類まとめ
ご覧頂いてお分かりのように、脂質には様々な種類があり、それぞれ特徴があります。
一般的に良いとされる脂質にも、過剰に摂取すれば逆に健康被害を高める可能性も存在し、一般的に悪いとされる脂質の中にも、適量を摂取すればポジティブな効果が期待出来る物も存在します。
それぞれをバランス良く、適切に摂取する事が望ましいと言えるでしょう。
脂質は1日何グラム必要?
一般の方であればここまで意識する事は難しいかもしれません。
しかし、増量中でもPFCバランスを意識して、クリーンバルクやリーンバルクで筋肉量を増加させようとするレベルのトレーニーであれば、脂質の内容まで意識する事はそれほど難しい事ではありません。
例えば、多くのトレーニーに愛用されているカロリー計算サイト
では、脂肪酸の量まで計算する事が出来ます。
クリーンバルク、またはリーンバルクで増量をする方は、毎日の食事メニューを固定化している場合が多いと思いますので、一度ご自身の一日の食事メニューをslismで計算してみて、脂肪酸バランスを確認してみる事をおすすめします。
それでは実際に脂質の摂取量を設定する際の目安を解説していきます。
脂質の摂取量目安
厚生労働省が公表している推奨栄養バランスは以下の通りとなります。

これを見ると、男性も女性も全体のカロリー比で脂質は20~30%程度にする事が望ましいとされています。
更に、成人であれば飽和脂肪酸は7%以下と推奨されています。
具体的に計算してみましょう。
例えば1日の総摂取カロリーが2500kcalの場合
| 脂質全体の摂取量 | 飽和脂肪酸の摂取量 | |
|---|---|---|
| 下限 | 500kcal(2500×0.2) | 175kcal(2500×0.07) |
| 上限 | 750kcal(2500×0.3) | 175kcal(2500×0.07) |
となります。
ちなみに脂質は1グラム9kcalで計算されますので、グラム表記すると
| 脂質全体の摂取量 | 飽和脂肪酸の摂取量 | |
|---|---|---|
| 下限 | 約56g(500÷9) | 約19g(175÷9) |
| 上限 | 約83g(750÷9) | 約19g(175÷9) |
となります。
もちろんこれらは平均値の目安であって、全ての個人にとっての最適解とは言えない面もあります。
例えば体質上脂質を控えるべきという方もいらっしゃいますし、逆に平均値よりも増やした方がポジティブな反応をする方もいらっしゃいます。
従って、大切なのは一般的な目安を理解して、そこからご自身の体質や身体の反応を見て微調整を行う事だと言えます。
例えば筋トレの効果が停滞しているという場合においては、動物性脂肪の多い牛肉や卵黄を増やしてみる、筋肉の増加に比べて脂肪の増加が早いと感じた場合は不飽和脂肪酸の割合を高める、といった工夫が必要になります。
感覚に頼る事を好まない場合は、血液検査によって定期的にコレステロール値を測る事も有効でしょう。
微調整方法は様々な方法がありますので、ご自身の状況に応じて工夫する事をおすすめします。
注意点
ここまで脂質の重要性や特徴、摂取量の目安等を解説してきましたが、次は注意点を解説していきます。
過剰摂取
ここまでお伝えしてきている通り、脂質に限らず全ての栄養素には適正な量が存在します。
ある一定まではポジティブな反応を見せていた栄養素が、一定のラインを超えるとネガティブな反応になる場合もあります。
例えば身体に良いとされる不飽和脂肪酸の1つ、オメガ6を多く含む植物油は、摂取の増加とうつ病の増加の関連性を指摘されています。
参考文献:Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討
ポジティブな反応を見せているからといって、単純に摂取量を増やそうとしない事をおすすめします。
自分自身の感覚を大切にする
ここまで解説してきた推奨量の目安は、あくまで万人に対しての平均的な目安であって、全ての個人の適正量ではありません。
ある個人には少な過ぎる場合もありますし、逆に多過ぎる場合もあります。
脂質の内容まで気を配る、高いレベルで食事を管理するトレーニーの方であれば、通常の方よりも感性や感覚が研ぎ澄まされている場合が多く、身体の変化や反応に対して敏感に察知出来る傾向にあります。
理論は理論として受け止めて、その上でご自身の感覚を大切に食事管理を行って頂きたいと思います。
まとめ
- 筋肉の成長に脂質は重要
- 停滞期を打破する効果も期待出来る
- 健康面も考慮して適切な摂取量を心掛ける
- 身体への反応を見て微調整する事も必要
いかがでしたでしょうか。
一般的に脂質に対して上げられる議論は『摂るべきか?』『摂らないべきか?』の二極化である場合が多く、あまり建設的ではありません。
重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを理解して、その時の自分に応じた適正量を摂取する事です。
タンパク質や糖質に比べて、脂質に関しては理解が進んでいない印象を受けます。
この記事を読んだ事で、周りのトレーニーよりも理解が一歩先に進み、トレーニーとして更なるステップアップのキッカケになってもらえたら嬉しいです。
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